コンパクトな呉昌碩

コンパクトな呉昌碩

風水の考え方などを随所に取り入れ、最も売れ行きのよい「厄除け開運の香り」は、「やる気が出る」とされる赤色。 豊かさのシンボルの丸い形で、玄関に置くと開運につながるとの触れ込みだ。
消臭・芳香という機能ではなく「金運の香り」などといったキーワードが付加価値となり消費者をとらえている。 「四次産業とパートナーシップを組む。
2次産業が付加価値を高めるにはそれが一番だ」。 Hの商品政策を担うK真常務はこう力を込める。
美容やエンターテインメント産業など消費者の心理的満足を満たす生産性の高い、サービス業から一歩抜け出した業種が四次産業の定義で、「他社の類似品を出していては価格競争に巻き込まれるだけ」。 Hは、脱デフレの需要創造に向け、P商品の開発にも力を注ぐ。
同社は2004年春、化粧品市場に参入した。 Sなど大手がひしめく1兆4千億円の市場に挑むには、「大手と同じことをやっても競争にならなど。
温めているのが名刺サイズの化粧品セットのアイデアである。 女性の多くは、多数の化粧品をバッグにいっしょくたに入れて持ち歩く。
こうしたスタイルから、「ポケットに入る化粧品セットができないか」「毎日の洋服に合わせてセットを取り換えられれば楽しいはずだ」といったアイデアが次々に浮かぶ。 関西のアパレル企業と商品化に着手、生活スタイルも提案しつつ新市場を切り開く考えだ。
K常務の手元には自社や競合他社の日用品市場の利益分析調査がある。 シェアトップは利益率が3割と高い。

ニ番手はほぼトントン、3番手はみな赤字といった内容だ。 「先発メーカーは70パーセントの確率でシェア首位を維持し、後発で逆転したのはわずか25パーセント。
とにかく先発商品を生み出すしかない」。 その号令の下、2002年3月に生まれたゴキブリ駆除スプレー「ワイパアゴキパオ」は150万本を出荷するヒットとなった。
殺虫成分をスプレーで噴射するのではなく泡でゴキブリを包んで殺すという独自の発想が受けた。 E製薬とD駆除の2強に食い込みシェア1割また2003年春発売した殺虫剤「P」も、ユニークな開発視点が消費者の関心をさらった。
化粧用のコンパクトのような平くったいケース。 ボタンを押すと、パカッとあいて中に折り畳んである紙がふわりと広がる。
平らになったところで止まるかと思うと、さらに生き物のよ弱を占める。 ゴキブリスプレーは殺虫効果アップと値下げ競争を繰り返してきた。
しかし、殺虫までの時間がコンマ数秒短くても、消費者にとって新鮮さはない。 ゴキブリを見るのもさわるのも嫌だ、という声を忠実に聞くなかで新しい市場が見えてきた。
「ゴキパオ」の2003年8月の平均価格(NPOSデータ)は741円。 同一カテゴリー商品平均に比べ、170円ほども高い価格を維持している。

「癒しや占いなど心理作用をもたらすものも四次産業。 日用品の付加価値を高める」(K常務)。
NPOSデータによると、「F厄除け開運の香り」の2003年8月の平均価格は461円(同ジャンル約百商品の平均価格は320円前後)。 しかもデフレ下にもかかわらず発売直後の2002年8月よりも40円近く上がっている。
さらに「購入者を調べたらそれまで消臭・芳香剤を購入したことのない消費者が7割もいた」(K常務)。 需要開拓の面でも、四次産業とのパートナーシップは大きな力を発揮した。
日用品では100万個を超えれば大ヒットといわれる中で、Fシリーズは出荷量が600万個を超えた。 畳みかけるようにHは2003年10月、風水シリーズで入浴剤市場にも新規参入した。
同商品は金色と銀色の金属を体に張り付け、その微弱電流を使って血行をよくし筋肉のこりをほぐすという。 ただP商品だけに未経験の消費者に商品の狙いや仕組みが伝わりにくい。
考え抜いた末、K常務は情報番組そのものに目をつけた。 「CMは消費者が受け身。
積極的に消費者が情報を欲する仕組みが必要だ」。 「I」にはもうひとつ仕掛けがある。

発売直前に、全国の書店に「貼るだけで痛みが消費者を乗せるパブリシティーK常務は2003年夏、吉本興業に足しげく通った。 秋から始まる吉本の健康情報の新番組をHがバックアップする交渉を進めるためだ。
念頭にあるのは医療・衛生雑貨の製造・販売子会社、大3(高知市)が同年9月に発売した「I」。 この商品のパブリシティーにおうに立ち上がり、ゆっくりと静止した。
その間、3〜5秒。 一般の殺虫剤につきまとう殺伐とした感じがまるでない。
商品コンセプトは玄関に置いても違和感のない殺虫剤。 機能と価格競争に明け暮れる日用品業界。
ただ、消費者の関心はそれだけではない。 見た目で勝負したPの出荷数は40万個を超えた。
あまたの商品の中で存在感を出し、顧客に手にとってもらうには、「日用品といえど五感に訴えるようなエンターテインメント性を備え、消費者に新鮮さを与えることが大事」とK常務は語る。 ける秘策である。
3ステップで変身Hにも実は、価格競争にもがき苦しんでいた時期があった。 「3つのP」を軸にした創造型企業に生まれ変わったきっかけは1998年、米ハーバード大に留学していた創業一族直系の鎌解消!金銀二極式」(双葉社)という書籍が積まれた。

書籍は出版社サイドで編集したものだが、書籍の付録の金属玉は「I」と同様の製品。 消費者が積極的に情報を求めて足を運ぶ書店を使って新カテゴリーを浸透させる。
Hは大正12年創業の老舗日用品メーカー。 しかし「P」「H」「I」など利益を稼ぎ出す知名度の高い定番商品を抱えていたものの、多くの後発品が赤字事業となっていた。
さらに防虫剤で生きてきた企業なのに、無臭タイプの開発にすら乗り遅れていた。 デフレ経済下で、定番商品の黒字幅も徐々に縮小、「このままでは枯死すると思った」。
社内改革の第一歩として、危機感の醸成に努めた。 「後発事業は7割以上の確率で赤字になる」。
まずは、こうした計算式を社内に徹底。 他社の類似品の提案には「会社をつぶしたいのか」と意識改革を変えさせた。
荒療治にも踏み切った。 技術畑の開発部を2002年春までの3年間解体し、白衣の研究者を商談に出向かせた。
消費者調査を徹底して、顧客不在の技術競争からマーケティングへと目線を五感に訴える一方で発想力を高めるため権限委譲も徹底する。 これが第2のステップだ。
「P型商品であれば、失敗しても不問にした」。 恐る恐るだった組織を動かすにはアメも必要だ。
次の手は「小さな成功体験を共有すること」だった。 とっかかりは2000年冬に発売、270万個を出荷した電子レンジで温める湯たんぽ「A」シリーズ。
K常務は「実はあれは成功が約束きれていた商品だった」と明かす。 すでに米国でヒットの兆しがあり、厳密にはP商品でなかったが、敢えてこの事実に目をつぶった。
社内は独自商品のヒットととらえ自信を深め、アイデア商品の開発に積極的に取り組み始めた。 ロジカルな需要創造型企業への社内変革は進んだ。

しかし「ゴキパオ」の類似品が早くも出るなど、力をつけ始めたHに、他社も目の色を変える。 先行型企業に一瞬たりとも休息は訪れない。
Q、25年目の再加速2004年、誕生から4半世紀を迎えたTのミニカー玩具「Q」のエンジンに、再び火がついた。

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